snow,tail,blanket ほんものなのよ、と彼女はいった。ほんものの馬の尻尾なの。さわってみない? 五月の三週目、木曜日の夜だった。雪はまだやむ様子もなくテレビではニュースキャスターがこの時期にしては珍しいことですと白く染まった熊本城を映していた。架台にも櫓にも、そして樹齢八〇〇年を越すという御神木にも雪は降り積もっていた。熊本から引っ越したのは地震の一か月前だった。二〇一六年の三月三十一日。そのわずか二週間後に熊本に大地震が起きた。そのニュースをわたしは東京で聞いた。引っ越す前に熊本城の天守閣に登り、景色をよく目に焼き付けておこうと誓った。いまとなっては忘れられるはずがなかった。東京に来て三年。満員電車にも仕事にも慣れ、恋人もできた。ふたりと...13Sep2018百合小説