君は噛まない


信号が赤になるから駆け出した冬がいちばん好きだと言って


好きな人の好きな部位とか甘噛みしたいよね噛みたいよねって君と


常温で保存できます常温で死んでいきます積まれた夢も


噛みそうな言葉でしりとりをしようか噛んだら終わる笑って終わる


心臓についてあなたが語るとき吹き抜けの塔の明るさ


辺境であなたは踊る観客のいない舞台で風が生まれる


ぼろぼろの毛布で君を包んだよ月の見えない川に浮かべた


君は噛む僕以外の人を噛む僕はひとりで僕を噛んでる

すれ違いの猫たち

短歌・詩・散文など