紙の蕾を濡らすのは

胸骨が軋む冷えてく夜はずっと夜のままだよ触れてもいいよ

太腿の付け根で君の唇は「雨」と何度も繰り返してた

ひらかれて無数の傘が海という海に浮かんだまぶたのうらで

心音は帰るあなたの足音をこだましとんとっとんって、とんって、

なお薫る性欲性愛的なもの深夜に「燃えるごみ」として出す

涎垂らすあたしの寝顔の写メ寄こし「竜の涎」と書くか勇者よ

ふーん同窓会でそっか良かったですね ねえこのカフェオレぬるくないですか

コンビニのカラーボールを君の背に投げたい午後だ眩しい青だ

東京は湿度高いね君のふぐりもおへそのなかも洗ってあげる

慣れていくことを怖いと思わずに今日もイヤホン絡まる鞄

足指の隙間がとても冷えるから時々君に会いたくなるの

おひさまの薫りの毛布にくるまってふたりで孵化の真似事をする

お互いの足が触れ合う 湖に沈んだ靴はマネキンのもの

絨毯に落ちまくってるふたりの毛冬眠明けのケダモノ二匹

フレルナと書いてあるのにさわるから星座消えてく 終わるの。すべて。

くもりぞらを映したクモリガラスを映して曇るあたしの瞳

夕暮れはもう少し先 攣りかけた太腿伸ばし深呼吸する

幸せを押し付けないで理科室で蛙の次に解剖《ばら》されたいの?

ひとりずつ優しい人からいなくなる歩道橋から見ていた花火

電線した月 あたしたち答え合わせのつもりで、したの

ずっと誰かに見つけて欲しいと願ってた 海月が海に溶ける静けさ

寝たい眠れない泣きたい泣けない最後のチョコは溶けてたぐにゃり

折紙を刻んで雨と主張するあたしの横で君の折る花

終わるまで小石や街路樹に変わる ガードレールを君は抱いてる

玄関で君はあたしを見なかった潰れた紙の鳥を見ていた

さようなら、ごめん、別れの言葉っていつも同じで、月も、あ、落ちた

目覚ましよ凍れあたしの後悔と睫毛とあーもうその他もろもろ

ひどい顔してる鏡のあたしだった人あたしに戻せるあたしが嫌い

「覚えてるものならなんでも折れるんだ龍も蕾も花も嵐も」

残された紙の蕾を濡らすのは花になれずに刻まれた雨

すれ違いの猫たち

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