ウルトラマリン あなたのいない場所で、あなたの好きな歌を聴いていた。相手のいない片耳イヤホン。垂れ下がったケーブルを指でいじる。11月になって急激に寒くなり、今日の最低気温は3度。東京は街も人もすっかり冬の装いだ。空を見ながら白い息を吐く。制服の上に着ているダッフルコートは4番目のボタンが取れかけている。――縫ったげよっか。 この屋上で初めて会ったとき、あなたはわたしにそういった。金網をのぼるときに引っ掛けたのだろう。カーディガンの袖口がほつれていた。 あなたはなにもいわず、わたしのカーディガンを縫ってくれた。わたしがなぜ死のうとしていたのか訊くことなく「できたよ」と笑った。 それ以来、放課後にあなたと屋上で会うようになった。わたしはいじめられて...05Nov2018百合50音百合小説